乳がん患者さんのご家族の想いが企業を動かした「乳がんプロジェクト」の取組みが取り上げられています
乳がんプロジェクト始動
和歌山トヨタGが知識普及へ
和歌山トヨタグループ(小川至弘会長)で、乳がんの知識を広め、早期受診を訴えるピンクリボン運動「灯・AKARIプロジェクト」が立ち上がった。きっかけは、乳がんで家族を亡くした女性社員の経験。一人の声をくみ上げ、グループ全体が動いた。
「レクサス紀三井寺」(和歌山県和歌山市小雑賀)で働く南直子さんは、姉の美帆さん(享年42)をことし1月、乳がんで亡くした。美帆さんは35歳で乳がんを発症。7年間の闘病生活を送った。最後は薬の副作用で声も出ず、動けなくなり、何日も高熱が続いた。苦しみながらも必死にがんと闘う姿が、南さんのまぶたに焼き付いている。
「生きたくても生きられない人もいる。生きている者は何かしないと」と考えた南さんは9月、小川会長に「社会貢献活動の一環として、企業を通してピンクリボン運動に参加したい」と申し出た。
小川会長も昔、知り合いを乳がんで亡くしたことがある。その時の壮絶な光景が一気によみがえった。「大切な人が苦しみ続ける姿は見ている者もつらい。気持ちが痛いほど分かる」。日本人女性の11人に1人が乳がんにかかるという。発見が早ければ早いほど、助かる確率は高い。先手を打つことが大切だ。「ビジネスでなくても人助けになる。やってみなさい」とすぐに背中を押した。
グループ会社の「和歌山トヨタ自動車」「トヨタレンタリース和歌山」「トヨタL&F和歌山」から9人の女性社員が集まり、10月1日、プロジェクトが発足した。目標は「女性社員をはじめ、大切な家族やグループに関わるお客さま、全ての方々に乳がんの知識を持っていただく」ことだ。
姉の主治医だった紀和病院紀和ブレストセンター(橋本市)の梅村定司医師に相談に行くと、「ピンクリボンは誰のものでもなく、志ある者が行うものである」と励ましの言葉をもらった。
まずは社内で乳がんについて学ぼうと、年明けの1月17日に梅村医師を迎え、講演会を開く。見た人が乳がんに関心を持つきっかけになればと、社員が胸に付けるピンクリボンバッジも考案中だ。活動を耳にした男性スタッフから、「知り合いも乳がんだったよ」「乳がんの人、周りに多いよね」などと声を掛けられることも増えた。「まずはグループ内で機運が育ち、広がっていけば」と考えている。
南さんには、「姉にもっといろいろしてあげたかった」と心残りがあるという。自分に少しでも乳がんの知識があればよかった。もっと早く病院に連れて行けばよかった。思い出すと涙がこぼれる。
もう後悔はしたくない。「今、生かされていることに感謝し、自分にできることを行動に移していこう」。そう決めている。
18年12月28日 07時00分[社会]
わかやま新報より転載: http://www.wakayamashimpo.co.jp/2018/12/20181228_83756.html